個人的イノベーションのジレンマ「ピーターの法則」

ピーターの法則というものがある。

ピーターの法則(ピーターのほうそく、英: Peter Principle)とは組織構成員の労働に関する社会学の法則。

  1. 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。すると有能な平(ひら)構成員も無能な中間管理職になる。
  2. 時が経つにつれて人間はみな出世していく。無能な平構成員はそのまま平構成員の地位に落ち着き、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は無能な人間で埋め尽くされる。
  3. その組織の仕事は、まだ出世の余地のある、無能レベルに達していない人間によって遂行される。

なぜ上司(特定の人をささない)は無能になるのか、組織はなぜ無能なのか、人間の根本的な階層社会の問題点の話だ。

よくある話として、小さな会社が急に大きくなって中間層が相対的にいなくなり
結果として、カオスやおもいっきり統制を取り過ぎて硬くなり、結果として事業がうまく行かなくなるという話がある。

インターネットは、フラットだ、フラットネットワークだと言ってそれを解消したかのように思えたが、現実に起きる組織と言うのは階層社会をベースにしており、そこを超越しているような状況にはなっていない。

階層化の限界

今までなんとなく、おかしいと思っていたポジションとボーナスの関係性問題が人間の本能が望む階層化によって発生するものなのだ。

個人がうまくいった場合に、その人は有能だと評価されるため、それをスケールするためにポジションを上におくり、ボーナスを貰う。しかし、有能さは、万能なものではなく、レイヤーによって必要な能力が全く違うため、無能になる。そのため、無能になるまでポジションが上がり、結果上位レイヤーはみんな無能で埋まる。

有能さにベクトルがなければ、階層化モデルはうまくいくのだが、実際には有能さにはベクトルがあるためにうまく行かなくなる。

どうすればいいのだろうか?幾つか階層モデルに変わるモデルを考えてみる。

階層モデルに変わるモデル

まずはすでにある既存モデルを並べてみる。

完全フラットモデル

github社がやっているという完全フラットモデル。全員給与固定で役職なし。
確かに階層モデルは解消する。解消するが・・・なんか夢がない・・・。

階層+主体性モデル

階層化で報酬を払いつつ、評価する価値観として主体性を強く評価するというモデル。主体性とは、自ら組織の価値観を評価して、自己の評価によって行動を決定するモデルだ。視点と頭の良さが必要。
完全に解消するわけではないが、階層モデルに比べるとまだましだ。

2つのモデルをみると、階層性を完全に廃したモデルと、階層性の中に価値観としてのフラットを強く取り入れたモデルとなる。この他にあるか考えてみる。

実現したいコンセプト

  1. 組織として目的が達成し続けることができる実現力を持つ
  2. 組織の内部の人が現実的なレベルで幸せである

幾つか考えてみるが
組織の結果と人の状態の2つが最低要件であるように思える。
組織として結果を出す、人が快適だと思える組織である。
この2つはそのまま接続をするとコンフリクトを起こす。
その前に、組織としての結果と人が快適だと思える状態というのは、おそらく星の数ほどあって、そもそもここにいろいろな状態が入るため、全て十全にはならないということは想像に難くない。

さて、複数のレイヤーの問題を同時に解くというのはひどく難しい。それはそれぞれのレイヤーでよいと思われることがほとんど必ず、ぶつかるからだ。これをとくためには更にレイヤーを足して目的でまとめるのがよい。

今回だと市場経済を追加すると良いと思われる。
まとめると

  1. 市場経済
  2. 組織

の3層問題を同時に解く形になる。
市場経済が求めるものは、発展と安定性である。
ただ、地球リソースが限界があり、発展をするためには今までに発展していないところの市場を切り開いたり、今までの市場の上に更に市場を作ったりといったイノベーションが最近のトレンドである。組織に求める次点として、マーケティング的なポジションや、組織的な能力としてケイパビリティが求められる。

最近は特に、金融経済が安定性の点で限界点に達しており、これ以上上の上位構造も特に無いため困ったものだという状態になっている。次に起きるのは崩壊か、進化かだろう。
他にグローバリゼーションによって、個別の地域での組織ポジションというものがなくなりつつある。世界で1位以外に価値はなくなってしまう恐ろしい世界だ。更にこれは戦争で世界が壊れる以外には不可逆である。

組織の求めるものは、発展と安定性である。
最近は、人類があまり増えないため市場が飽和しており、新しい市場を見つけるということが非常に困難になってきている。ただそれでも組織にとってイノベーションは一発逆転の夢であるため、そこは担保しておきたい。イノベーションと安定性という逆の価値観を同時に融合させる必要がある。プロダクトとして多産多死を制作チームとして少産少死を目指すという無茶な注文だ。しかし、これを出来ないことには、未来がない。

人間の求めるものは、発展と安定性である。
最近は市場があっという間に飽和するため、結果して求められる能力が数年単位でかわり、かつての終身雇用など夢のようになっている。どんな年齢であっても学習を辞めてしまっては安定性から落ちてしまうのだ。このような場合、個人としては市場性のあるスキルを学ぶか、安定性のある組織に所属するといった策を使うことになる。


まとめてみると、発展(成長)と安定の2つを各レイヤーで必要されている事がわかる。
このへんのモチベーションというか法則というのは、この世界でよく見るタイプのものだ。つまり、生命に関わる時によく出るものだ。カオスのエッジの状態を維持する複雑系の問題だ。

理解は進んだものの、さてどうしたものか。