終末の国

脳内対話LoL11話。

終末の国、可能性の終焉

id:kaerusanu「なんか、ひどくひどい説明を見た気がする」

白猫騎士「それよりも、招待状をもらいましたね」

id:kaerusanu「ああ、そういえば。ええとどれどれ

招待状

こんにちは。
終末の国へ招待します。どうぞ、来てください。
きっとひどく馬鹿げた混乱するような矛盾が楽しめると思います。
終末王

罠だろこれ。」

白猫騎士「罠ですね。たとえ罠のつもりじゃなくても、もたらすものは変わりないと思います」

id:kaerusanu「だよね。誰がこんな罠にわざわざ引っかかるんだよ」

白猫騎士「うむ、これが真の意味で招待状ならば・・・嫌でも連れて行く何かを・・・召喚か」

id:kaerusanu「前に言っていた、こちら側の召喚ということか」

唐突に景色が歪む、時間が歪む、意識が歪む。

白猫騎士「招待状を判定に使われたか」

id:kaerusanu「色々ぐねぐね・・・」

ゆがみが戻る。時間が戻る。意識が戻る。
そこは、天国かと思えるような草原の丘だった。空は青く、風は緩やかだ。

id:kaerusanu「死んだ?天国?」

白猫騎士「いえ、ここが終末の国です」

なぜか嫌悪した顔で答える。

id:kaerusanu「終末の国と言う位だから、地獄とか死の国とかそんなのを見せ付けられるかと思った」

白猫騎士「私も、直接来たことは無いので、確証は無いのですが。ひどくおぞましい所だと聞いています」

id:kaerusanu「おぞましい?ここが?」

そこに一人の天使が現れる。天使にしては羽が黒い。

天使アルテマ「ようこそ終焉の国へ」

白猫騎士は今にも抜刀せんばかりに構える。

白猫騎士「まさか、あなたが出てくるとは。さすがに王の招待状は伊達ではないか」

id:kaerusanu「ん?知り合い?」

白猫騎士「いえ、名と姿を聞くだけです。彼女こそ、終焉(End)の女王(Queen)」

天使アルテマ「我が名は「天使アルテマ」、族を「終焉(End)」、クラスを「女王(Queen)」、核量を1/65536」

id:kaerusanu「なんで?核量が少ないの?今まで1/128とかだったのに?弱いの?」

白猫騎士「女王は役割が違うからです。チェスで8方向フリーであるように、彼女らはカーソル、ベクトル、力の行使者だからです。女王だけは、核量ができるだけ少ない方が強くなります。女王は、王のアバター(化身)です。王はその核量の大きさが問題になって、うまく動けません。そのため、力の行使者として女王が選ばれます」

id:kaerusanu「ふむふむ。女王は核量が小さいほうが強いと・・・・。圧倒的ではないか敵軍は!」

白猫騎士「女王は王の核量を、そのまま使うことができます。それは細く絞れば絞るほど、レーザーメスのように、ジェット水流のように鋭くなります」

id:kaerusanu「全然相手にならないということですね。わかります。ところで、彼女はどこかで会ったような・・・・・?」

天使アルテマ「私はもともとイヴァリースにて呼ばれた者だ」

id:kaerusanuイヴァリース・・・Final Fantasy Tacticsか。あ、これはゲームでね。彼女は最後のボスというわけだ。何で最後に戦ったのかよくわかってないけど」

天使アルテマ「あれはただ呼ばれただけ」

id:kaerusanu「唐突に呼ばれて戦うか。そうか、それが召喚か。そしてこれが召喚か」

天使アルテマ「そう。そして、私は今終焉の女王として在る」

id:kaerusanu「終焉か。そういえば、何でここが終焉なの?全然終わりに見えないんだけれど」

天使アルテマ「ここは終焉。可能性の終わり。ここに見える景色は全て世界の終焉。完全なる支配された三千世界の構造体」

id:kaerusanu「へ?」

天使アルテマ「最初は其処に何も無かった。次に其処には時間と空間が現れた。そして、其処にはやがて星ができ、星にはやがて生命が生まれ、生命には精神が芽生え、精神は情報世界を発見し、情報世界に情報生命が生まれ、限りなく広がり、それはやがて、星を越えて、銀河群を超えて、次元を超えて、時間を越えて、全てに到達した可能性の終焉」

id:kaerusanu「じゃあ、この草とか風とかっていうのは?」

天使アルテマ「世界子で構成された構造」

id:kaerusanu「・・・・。そうかこれはSFか。なるほど」

天使アルテマ「そうここに広がる世界は、全て可能性を食い尽くして終わった世界。それのことを又は完全なる死ともいう。それは完全なる成長を遂げ、あらゆる空間、時間に根を伸ばし全てのリソースを使い尽くした完全な形。それは、夢であり未来であり、管理された成長であり、望みであり、ありとあらゆる理想が叶ってしまった世界。其処に争いはなくあるのはただ穏やかな死だけ」

id:kaerusanu「不完全な世界に比べたら、それは理想的で非常に興味がそそられるのだけれど」

天使アルテマ「ここは時間流のエントロピーが発散しきってしまった場所。それは満たされた死。理想は理想であるから幸せで、そこについたら何も起伏の無い世界」

id:kaerusanu「暇なのは理解できるけど、それなら自分たちで娯楽でもすればいいのに」

天使アルテマ「かつてここの者たちによる娯楽が流行った時期があった、たとえばダイソン球によるボーリング大会とか。色々な変な組み合わせのあらゆることが行われた。でもそれらはみんな飽きてしまった。神と呼ばれるようになり、原始世界が育つのに水をやったり、世界間環境を整える趣味が流行ったりしたけど、それらもみんな飽きてしまった。何しろ、主観時間で10の284689794298473乗年経ったのだから」

id:kaerusanu「神か。その人たちの気持ちは理解しがたいな。神か神とは何か?」

天使アルテマ「それは埋まらない格差、取り上げられた可能性、不可逆な工程」

id:kaerusanu「神とは自己との格差か。なるほど絶対的な差別主義か」

天使アルテマ「差別を行い格差を定めるのは神の観測者の方。我々はなにも思わない。ただ、それを見ると憧憬の念を覚える」

id:kaerusanu「憧憬?それは超越者としての?」

天使アルテマ「失われた可能性を見出せるから」

id:kaerusanu「絶対者としての、相対者への憧れか」

天使アルテマ「感情を失ってから、それは絶対的な繰り返しとなりました。全ての権限を委譲して、何もやることはないのです。それは感情すらいらない。感情は生命の緊急警告装置のようなもの。それは問題なければ必要ない」

id:kaerusanu「感情がいらないか。それは生きることに意味が無くなってしまいますよね?」

天使アルテマ「感情を無くしたのではなく、完全であるために何も感じなくなったんです。それはやがて、それでも感情を感じたいという気持ちから、支配世界への具現化として遊んだりはしますが、あらゆることが永遠を過ごすにはつまらない」

id:kaerusanu「永遠の命か。確かに飽きるという感情すら閉じた方がらくなんだろうな」

天使アルテマ「時間すらもうすでに閉じていますけどね。ここは時間の流れからも隔離した空間です」

id:kaerusanu「もう、何もすることが無い世界か。それは確かに絶望なのかもな。何もかもを知っていて、もうすでに終わっていて、観測も力の行使もいらない。ああ、それが死か」

天使アルテマ「そう。それが完全なる死」

id:kaerusanu「なるほど、終焉の国を理解したよ。それでなぜ私が呼ばれたの?」

天使アルテマ「それは「全て」の繰り返しを「経験」するためです。全ての生を全ての誕生を全ての意識を全ての世界をはじめから終わりまで全て、全てを焼き付けて、全てを感じさせる」

id:kaerusanu「??」

白猫騎士「どうやら、進めばわかるタイプの問いかけのようだ」

id:kaerusanu「そうなのか?そうなのか。今はわからないが進むしかないか」