認識できない力ほどの脅威は存在しない

前回の脅威の続き。どんな脅威が最強かと言うのを考えてみた。

対処できない存在というのは、恐ろしい

例えば、唐突に前触れもなく起きる天災とか、宇宙人の襲来とか、一年以内の致死率99.9%のウィルスとか。たぶん、対処する前にどうにも出来ない脅威というのは存在する。人類の基盤を安全強度をぶっちぎって、ぼっきり折れるような脅威は簡単に想像できる。でも残念なことに、「面白くない」のだ。いや、全滅する人類を描く物語とかも面白いとは思うんだけどね。誰もが絶望する中で、未来を信じて活動するグループとか。うん、もちろん死ぬし、死ぬのも分かっていて、それでも無為には生きたくないという最後の煌めきみたいなものを残す物語とかね。

まぁ、だけどどう考えても倒せないような絶望的な状況から抜け出すような、誰もがひざを打つようなスマートな解決法とか、それは無理があるんじゃないかと思わせないような舞台装置を使って、解決するとか、そういうのが見たい。数学で言うと、何年も問題だけが誰も解けないけど、答えを誰かがとくみたいな感じか。そう、「質問と解答」なんだ。こんなのとけねーよ、と読者が投げるような問題を思いもしない方法で解く。

その解法は、問題の解じゃなかったりして、悩み続けることが答えだったり、感情的な工程が答えだったりするけれど。こんな状況になったらどうする?という問題を投げかけて、それを解いてみせるというのが物語のような気がする。

質問:新型魔王

というわけで、新しい脅威を考えてみた。時代は「現代」、世界のルールは「SF+」でいいや。

分散型処理システム:魔王

心的接続が現実よりも強い世界。
広がる不致死性のウィルス感染症。感染者は、たまにナルコレプシーのように突然意識がなくなり、眼球運動を激しく行う。脳波を測定してもそれは正常の思考状態。ただ、社会不安が広がり感染症なので隔離され、差別とか色々。
激しい事件は何も起きずに、ただひたすらに侵食していく。そして、起きてくるなんだかよくわからない事件とか。

主人公側は、感染後よくわからない幻想が見えるようになった人たち。彼らはその幻想の正体を問うために、よくわからない事件を解決しようとしたりするようになる。

チラシの裏

魔王は、総体として観測される。個々では何の力も持たない。分散型精神ネットワークの上に構築された共有意識が、自己を形成する。それは成長し、自己を認識する。そして、自己存在に悩む。ただ悩む。自殺とか考えるけど、やり方がわからない。それは人類社会に脅威として認識されることで初めて、自己存在に気がつく。
彼が不幸なのは、孤独であることだ。全能で万能で、リソースは人類の数パーセントを持てるくらい多いのに、他者を認識できないことは彼を苦しめる。
物語の終わりとしては、彼自身が何かを選択するか、自己の同位の存在を作り出すか、ということになる。魔王だけど、自己存在を問う思春期まっさかりみたいな展開で。「私はなんなのか?」というのが、彼の問いで。人類はその問いに答えることは出来ない。私が、自己の細胞に自己存在を聞いても仕方ないように。
彼は、何らかの答えを見つけることができるのか?それとも、絶望の上に自己の死を選択するのか?という物語。
解が「恋」とか「愛」とかだったら、それはそれで面白いと思うけど。そんなにこの世界は甘くなかったり。

というわけで、SFミステリ調で始まって、最後には哲学とか独白で終わりそうな物語です。