概念空間の拡張

デジタルな概念をアナログに拡張する

基本的に頭の中では、ON、OFFの2通りしかない。しかしながら、現実にはその中間の段階が存在する。だからこそ、言語的なあるなしを、数直線上に引き延ばす。なしを0、あるを1といてそれを延長させて次元の軸を作る。そうすることで、言語を空間座標に展開できる。ただし、かなりの限定されるが。

しかしながら、この方法にはメリットが存在する。それは、典型的な概念空間を拡張できるようになるからだ。概念空間とは、例えばみかんを表現するときにその「直径」、「真球度」、「糖度」といった属性をこの場合だったら3次元空間座標で表現することだ。そうすることで、概念上のある、なしという認識破断面を極力少なくすることができ、そこに潜んでいるアイディアや解を得ることができる。

概念空間上の検索

概念空間は、「何が起きたからどうなった」という時系列の因果関係を表現するのは難しいが、概念上の組み合わせの網羅を行うのには非常に便利である。また、概念空間の拡張を行うことで、今まで存在し得ない概念を作り出すことができる。全ての概念は、あらゆる原初感覚の拡張と論理による組み合わせでできている。そのために、「存在しない概念」というのは、かなり多いのだろう。

例えば「負の直径」を持つみかんや、糖度がゼロのみかんなども、概念上には存在する。現実の物理世界にあるかというとそうではないが、概念上の組み合わせは確かにある。これを使ってすぐにどうということはできないが、帰納法のようにnが証明されて、n+1が証明されれば全ての自然数が証明できるようなもので、その概念をある、なしから数直線上に拡張するだけで、その断絶の陰に隠れていた物が見えてくる。

新しいアイディアは必ず隙がある

古い物と比べたときに、新しいものは隙が存在する。それは別の最適化されるべきものであるからだ。映画とテレビが動画を見るという手段が同じでも、中のコンテンツ、使う方法、場所、営利モデル等全てが違うように。同じような型であっても、それは別の最適化される場所という物が存在する。

それを的確に見つけられれば良いのだが、そう簡単にできない物が多い。コスト問題は、かなりの確率でぶつかる話であるし、そうでなくても色々壁がある。ネットで生まれた新しい型というのは、かなりの確率で現実世界とは違う最適化が行われる。結果として、現実世界との軋轢を生んでしまう。

だからといって、それが「悪い」というのは、あまりにも一方的な見方だ。世界が違い、そこを支配する法則が違うのであるから、それが別の物になるというのは、当たり前だ。ここは違う世界であり、その最適化された形は別の物になる。それを考えずに、例えば公共事業とかTVの世界とか、本の世界を持ってこようとすると、酷い目にあう。それは最適化された場所が違うからだ。人間が宇宙や、海中にほっぽり出されても息ができずに死ぬだけなのと同じことなのだ。

アイディア構築のための認識工学

まず、情報には、前提となる条件が存在する。それは例えば何か物を作るアイディアであれば、現実に作れるか?とかコストとか、地球という環境に合わせた物理的な強度といった前提条件が存在する。だが、最初にこれらを考えてしまうとおそらく既存の物が優れていて新しい物を作る必要がないという結論が出るはずだ。それは、現在の条件での最適化されたものが、既存の物であるからだ。例えば車のワイパーというのは良い例だろう。

だから、アイディアを作るには条件を無視した無条件検索というスキルが必要になる。自分はネィティブに実行可能なのだが、普通はそうでも無いらしい。既存の検索条件に引っかかりそうな場合に使う言葉がある。それは例えば「理想の」だったり「100年後」だったりして、現実の条件からはずすような検索をわざと行う。それを行った上で出てきた物の原型となるような物を、現在の条件で探し直すということをすればいい。

認識工学上のアイディア作成というのは、組み合わせによる条件一致検索でしかない。あらゆる物を頭の中で組み合わせてそれが条件を超えるかどうかを組み合わせているだけだ。そして、その組み合わせの検索範囲が広ければ広いほど選りすぐれたアイディアを発見することができる。

アイディア作成とは、虚世界における実世界に移行可能なものを発見する作業である。それは、可能性として既に存在する物であり、必ず超えられる壁である。小説家や、アイディアマンは同じ作業を行っているにすぎない。そしてそのアイディア発見から、現実に落とし込む作業が異なるだけだ。現実世界はまだまだ狭い。可能性は極大に存在する。