私は本に育てられた(下)

本の選び方

後半はちょっと重いので、最初に本にまつわるお話でも。

みんなは本をどうやって、選んでいるだろうか?自分の選び方は明快だ。表紙とカンですべて決める。本の体裁と題名は、その本のほとんどを表していることが多い。表紙と題名で選ぶと大体が当たる。当たる率は8割くらいだろうか。

古本屋ではこのような方法で、気になるものを10冊20冊と一度に買ったものだった。当然自転車だったし、ハードカバーばっかり選んだから、帰りは非常に重かった。それでも、いい本を買うことができた時は、非常に満足感があった。

あとは、自分と趣味が合いそうな人に、お勧めの本を聞くというのもよくやった。それも当然ながら当たる。でも、自分以上に読んでいるというような人は残念ながら周りにはいなかった。後、趣味の合うような人も少なかった。

すごい本に当たると、ほかの人に紹介したくなる。でも、自分はたいていハードカバーの本を読んでいるので、紹介しても「こんな厚いの」としばしば、いやほとんど読んでもらえなかった。まぁ一方的な紹介であったから、でもあるんだけど。それでも、いい本に出会った時の感動を誰かに伝えて、共感してもらいたかった。一緒に「すげー」って言えるような人が欲しかった。

本を書きたいという欲求

読めば当然のように、自分もそのようなものを作りたいという欲求が生まれる。自分は本が書きたかった。小説でも、なんでもいい。とにかく何か人を感動させるようなものが書きたかった。しかしながら、自分は文章能力がほとんどなかった。正しく言えば、書くという経験が足りなかったんだろう。

今、まがいなりにも書けて、それを読んでくれる人がいるというのはとても嬉しい。そして、まだ本を書きたいという欲求はある。いつか、本を書こうと思う。その練習と考えの実験としてこのブログがある。こんなにうまくいくとは思わなかった。読んでくれているすべての人に感謝します。ありがとう。

本の紹介の続き

浪人時代の後半から、大学時代にかけて読んだ本の中で、自分に大きく影響を与えた本を紹介したいと思う。正直言えば、読んでみて驚いてほしかったりするが、何せ高いものばかりだ。それ以上の価値があることは保証するが。最初は図書館で探してみるでもいいと思う。

ミーム

マインドウィルスという考え。情報子として、どのように情報が人間の思考の中を生きているのかという考えについての本。自分の今のモノに対する考え方の基となっている。自分の考えはこれをあらゆるレイヤーに拡張させたものであるが。概念の概念という世界が非常に解りやすく、面白く書いてある。

ミーム―心を操るウイルス

ミーム―心を操るウイルス

パワーシフト

1990年とちょっと古いので、どうかと思うが、とにかく凄かった。力の関係(暴力<金<情報)ということと、インターネット社会をほぼ正確に予想していることに驚いた。今の状態もほぼ書かれていることの範囲内だ。視点が、経済、政治、情報などと、とにかくたくさんあり、すごいの一言だ。厚いとは言え、読むのに1月かかった。

パワーシフト―21世紀へと変容する知識と富と暴力

パワーシフト―21世紀へと変容する知識と富と暴力

心の社会

心の最小要素は何なのか。どこまで小さくしたら心でなくなるのか。エージェントという概念の導入と頭の中で何が行われているのかというのがよくわかる。これはすごいと思った。

心の社会

心の社会

ユーザーイリュージョン

これはすごい!!とにかく凄い。意識は幻想ということ。帯域と意識の話。意識が生まれたのは、実は紀元くらいだったという予想も驚きだが、何といっても、くらくらするぐらいに展開される内容が圧巻だった。意識と心について、ものすごくインスピレーションを掻き立てられる。これは敵わないと思った一冊。

ユーザーイリュージョン―意識という幻想

ユーザーイリュージョン―意識という幻想

SF

大学に入ってから、SFを読むようになった。読んでみて驚いた。とにかく凄い!背筋がぞっとするような想像力の波に飲み込まれる。常識の枠を外すことで、今の社会を冷静に見ることができるようになった。SFを将来書いてみたいと思った。

星を継ぐ者

これは、読み終わった後にフィクションだと知っていても、そうであってほしいと思わせた。背筋がぞくぞくした。全く違う世界に持っていかれてしまった。まさにセンスオブワンダー。といっても、わからないだろうから、軽く説明。記憶だけで書くので微妙に違うかもしれないですがご愛嬌ということで。

20XX年
月で赤い宇宙服に包まれた死体が見つかった。しかし、どこの国のものだかわからない。調べていくうちに衝撃の事実が発覚する。死体は数千年前のものだということがわかった。しかし、どう見ても今の人類と同じだ。しかし、持ち物は知らない言語と、明らかに今の地球と違う地図とカレンダーがあった。これはどういうことなのか?地球の地形が大幅に変わったのか?それとも他の星系からのお客なのか?

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

竜と鼠のゲーム

某アニメの元ネタとして、割と有名?なのではないかと。著者のコードウェイナー・スミスは、頭の中に別の世界があるかのように淡々と描いていく。それも数千年のスパンで。宇宙に進出した後、数千年も経てば全然、違う世界になっているし、人という形も変わっている。ありがちな科学万能という立場ではなく、どこか血と肉が見えるような、おぞましさと優しさが同居しているような、変わった世界観だ。短編なので読みやすいかと。

ディアスポラ

すごいすごい言いすぎなので、ちょっとあれなのですが。これはすごい!!マジですごい。想像力が半端ではない。時は人が人で亡くなっているぐらい未来。肉としての人は進化と分化が進んでいて、意思の疎通が難しいレベルになっている。主人公は地下深くにあるコンピュータの都市の中の住人。要するに情報生物だ。あと、もうひとつ、宇宙開発用ロボットも自己意識を持って、宇宙開発を行っている。その三つの種族が、ある理由で逃げるという話だ。ディアスポラは遷都という意味。どこに遷都するのか?は読んでみればわかるが。意識が全く違う世界に連れていかれた。とにかく凄い。シャレにならんくらい。

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

幸せの理由

いいかげん褒めすぎて疲れてきた。だが言おう。これはすごい!!上のディアスポラと著者は同じグレッグイーガン。いや、天才だと思うのですよ。本当に。
ええとこれは短編集です。ですので題の「幸せの理由」を触れてみようかと。

幸せとは、脳内麻薬エンドルフィンが分泌されること。化学的に言えば、その通りだ。でも、それはあまりに味気ない。
主人公はいつも幸せな誰からも好かれる少年だ。でも、彼は脳に病気があることがわかる。放っておけば死んでしまう。なので手術をした。最新のナノマシンをつかった治療だ。手術は成功する。そして、死の恐怖から逃れた。しかし、少年は幸せではなくなる。何をしても笑っていた少年は、全然幸せを感じなくなってしまう。そして、引きこもる。15年ほど。そして、ようやく見つけ出す。自分は手術の時にエンドルフィンレセプター(受容体)を殺してしまったらしいことに。そして、また回復手術を受ける。…そこから、どんな変わった世界が見えるのか?幸せとはなんだろうか?読んでみてからのお楽しみ。

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

その他

本じゃないけど。影響を受けたものを少しだけ。おまけ。

タクティクスオウガ(ゲーム)中学生

このゲームは素晴らしかった。当時、エセファンタジー(魔王とか魔剣とか、魔法とか)が主流の、どこか現実離れしたおとぎ話がほとんどの主流だった時期。このゲームは違った。リアルな民族紛争を描いたのだ。島に主人公は3つある部族の一番虐げられている部族で、扱いが奴隷に近い。

そして、収容所にいる同族を解放して一緒に決起しようとする。しかし、収容所にいる同族の反応は冷たい。そこで、現れる選択肢は「他の部族のせいにして、同族を虐殺することで同族の決起を促す」か「今までともに戦ってきた人たちにはむかっても、そんなことはさせない」というもの。どちらも選択できるし、どっちもバットエンドにならずに、話は進む。

今まで生ぬるい物語を見てきた自分は、ショックだった。このゲームはシステムなどの部分もかなり手が込んでいて、素晴らしかった。一時期というか、このようなゲームが作りたいと思った。ただ、当時技術も何もなかったわけだが。

タクティクス オウガ

タクティクス オウガ

攻殻機動隊(アニメ)

近未来SF。普通のアニメのような、ぬるいものではなく。ものすごく情報量が多く、シナリオが濃い。これは驚いた。扱うことも社会情勢や、社会問題のようなすっぱりと割り切ることができないものばかり。伊達にSFではなく、きちんと新しい考えやアイディアを詰めている。音楽や、映像も素晴らしい。こういうような作品がたくさんあればいいのになぁ。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 13 [DVD]

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 13 [DVD]


ふぅ。
ということで、これくらいでしょうか。
機会があれば、ちょっと手にしてみてくだされば、嬉しいです。