マニュアルの欠点と恋愛

マニュアルという不完全なモノ

バイトや、勉強、果ては恋愛まで現代社会はマニュアル化している。マニュアルの通りにやれば、ある程度うまくいくとそのマニュアルの作者は主張する。しかし、成功するマニュアルは非常に少ない。HOWTOとしてのマニュアルは成功しない。雑学と称して出来もしないマニュアルを溜め込んでいる人は多い。いつか出来るマニュアルが存在すると考えて、ダイエットの本を漁り、テレビを見ても、失敗するマニュアルの死屍累々を見るだけだ。

これはなぜだろうか?逆にすでに人間関係の前提があるマニュアルは、成功することが多い。これはなぜだろうか?

マニュアルはHOWTOをどうすればよいかということを、つらつらと書いてある。どうやるかという部分だ。しかし、前提部分をなくしてしまっている。なぜするのか、どんな人間がするのか。どんな理念で行うか。そのような部分を省いたマニュアルは、すでに前提を持った人以外には意味は無い。

マニュアル化された人生

仕事でのマニュアル。例えば、笑顔で接客しましょう。非常に正しい。文句の付けようも無い。笑顔で接客して悪いことなど何も無いように見える。それはそうだ。問題は、「なぜ、どうして」という部分を省いた教育システムにある。例えば笑顔で接客しましょうを、なぜどうしてまで書くとこのようになる。

笑顔である理由。
顔は人を表します。あなたという人が、顔には現れています。あなたはどういうような人でしょうか。どんな表情をして、歩いていますか?どんな表情をして人と接していますか?人は、表情を見てあなたを判断します。あなたはどんな表情ですか?どんな表情で笑って、話していますか?

逆にあなたはどんな表情で他の人に接して欲しいと思いますか?苦虫を踏み潰したような表情の人を見たときはどうですか?笑って笑顔で接してもらったときはどうですか?あなたはどんな風にお客様に思われたいと思いますか?

笑顔は表情の練習すれば手に入るものではありません。それでも不自然なニセモノの笑顔は手に入るかも知れません。ニセモノの笑顔はどうですか?あなたはそのような接客をされたいと思いますか?笑顔は人です。笑顔がしたいなら、そのような人になるしかありません。そして、誰でもそのような人になれる能力を持っています。

人間が好きであること。お客様を心から祝福できること。何よりあなた自身が満たされる必要があります。笑顔はするものではありません。こぼれるものです。あなたが、心から満たされて笑顔が出来ますように。

圧倒的に長い。しかし、そぎとったものこそが、重要であることが分かるのではないだろうか?大切なのはお客様を思いやる気持ち。笑顔はその象徴としての存在だ。目的が無く、手段しか提示されていないものは、不完全である。誰もマニュアルを読んで感動しない。そんなマニュアルはチェックリストでしかない。

目的を考えて補完するひとは成長する。ただ、マニュアルを達成することを目標にして、働く人は頭打ちになる。どんなに頑張って完璧にマニュアルをこなしたって、そんなものだ。

マニュアルでは短期的な目標は達成できるが、長期的な目標は逆に達成できなくなる。簡単に成功する方法を与えたら、成功するためのプロセスを考えられなくなるからだ。

恋愛でのマニュアル

同じように恋愛でもよくマニュアルにしたがってというような考えがある。私はそんな考えが嫌いだ。ファッションをどうこうして、うっとりするようなコースを組んでデート、プレゼント。うんざりだ。別に、恋愛のこと自体がどうこうという話ではない。

「なぜ、どうして」という部分が抜けているからだ。どうすれば「手軽に」彼女と無難なデートが出来るのかということしか考えていない。自分自分ばかり出てきて、相手のことなんて何も考えていない。考えるふりをするだけだ。プレゼント一つとったってそうだ。

プレゼントをする理由
あなたは、なぜクリスマスに、誕生日にプレゼントをしますか?それが慣例だからですか?あなたは実は、プレゼントをしないで良いなら、したくないと思っていませんか?

お金が勿体無いからですか?手に入れたものには、わざわざ与える価値なんて無いからですか?それとも、あなた自身が飢えているからですか?あなたが満たされたことが無いからですか?与える価値を知らないからですか?

あなたは、普段誰かしらにお世話になっているはずです。その人たちに、いつも感謝をしていますか?当たり前と考えていませんか?あなたがいつも誰かに何かをしてあげて、そう思われていたらあなたはどう思いますか?

感謝を声にしていますか?伝わらなければ、その思いは意味がありません。あなたが好きな人は誰ですか?その人にそのことを伝えていますか?感謝を、尊敬を、敬愛を伝えていますか?

プレゼントというのは、人に思いを伝える手段です。あなたの思いを伝えるオプションの一つです。あなたの思いはそこにありますか?あなたの言葉はそこにありますか?

プレゼントをするというだけで、これだけになった。「容易に、出来る手段がどこかにある」と考えることほど間違えていることは無いと思う。それは何でもそうだ。自分で悩んで、二人で悩んで二人の関係を作れば良いのにと思う。恋愛関係を外側にしてはいけない。

恋愛関係は内側。誰よりも心を許しあえる仲だ。それを、他の人に容易に相談する意味が分からない。自分たちで考えて、第三者の意見が欲しいというのなら分かる。大抵は、「付き合い方が分からないから教えてくれ」だ。異性という不特定多数と付き合う万能のマニュアルは存在しない。あなたは、いったい誰と付き合っているんだ?と聞きたくなる。付き合い方は自分たちで築くものだろう。

マニュアルより、「なぜ、どうして」つまり理念

あなたは何を実現したいだろうか?それは手段ではないだろうか?本当の目的はなんだろうか?手段を目的として固定してしまったときに、腐敗は始まる。「なぜ、どうして」を考えなくなるからだ。第一義の目的をそっちのけで、手段を行使することをしてしまう。そして、環境が変われば、その手段を守ることに必死で、「なぜ、どうして」つまり、何でそのようなことをしているかを忘れてしまう。

大事なのは手段を守ることではない。目的を達成することだ。手段は最も適したものをその場で色々選ぶ。だからこそ、人生をかけてもいいと思える、手段よりも目的を思い出させる理念が必要だ。読むだけで心が燃えるような理念が必要だ。

手段を目的にしてしまったとき、それは腐り始めてしまう。目的も、固定ではなく、少しづつフィードバックを入れるとうまくいくのだろう。