学生ベンチャーといいうこと

無知は、それが他の愚かさと釣り合う場合には役に立つ。ベンチャーを始めるにあたって無知が有用なのは、あなたは自分でわかっているよりも多くのことができるからだ。ベンチャーを始めることはあなたが思っているより大変だけれど、あなたは自分が思っているより多くのことを出来るから、バランスが取れるわけだ。

多くの人はAppleみたいな会社を見て、自分にあんなことがはたして出来るんだろうか、と考えてしまう。Appleはちゃんとした組織で、自分は単なる一個人にすぎない。でもどんな組織もある時点では、数人の人が一室で何かを始めようと決めたものに過ぎないんだ。組織は作られるもので、それを作るのはあなたと何ら違わない人々なんだ。

誰もがベンチャーを始めることができると言うつもりはない。大抵の人には無理だろう。普通の人について私はあまり多くのことを知らない。私が良く知っている集団、例えばハッカーについてなら、もっと正確に述べることができる。優秀な大学であれば、コンピュータサイエンス専攻の学生のうち 1/4くらいは、やりたいと思えば自分でベンチャーを創業できるんじゃないだろうか。

「やりたいと思えば」っていうのは大事な限定だ。あんまり重要だから、そんなふうにさらっと言ってしまうのはごまかしになるかもしれない。ある程度の知性のレベルを越えている場合、優秀な大学のコンピュータサイエンスの学生ならほとんどがそうだと思うが、その場合は創業者としての成功はどれだけやりたいと思うかのみにかかっている。ものすごく優秀である必要はないんだ。天才じゃないなら、競争の少ない、ホットでない分野で始めれば良い。人事部向けのソフトとかね。これは適当に思いついたのを言ってみたんだが、多分今人事部にあるソフトより良いものを作るのに、天才である必要は無いと言ってもいいだろう。世の中にはより良いソフトを切望しながら退屈な仕事に耐えている人がたくさんいるんだから、ラリーとセルゲイには敵わないと思っていたとしたって、アイディアのクールさをちょっと下げるだけで十分やれる分野はあるさ。

躊躇してしまうことを避けるだけじゃなく、無知は新しいアイディアを見つけるのに役立つこともある。 スティーヴ・ウォズニアック はこの点をとても強調している:

Appleで私がやったことのうちうまくいったものは全て、(a)お金が無く、 (b)それまでやったことがなかった、という状況から生まれたものだった。そういう状況から私たちが生み出したものは全て素晴らしいものになった。今まで一度もやったことがないことだ。
何も知らなければ、全て自分で再発明する必要がある。あなたが優秀なら、再発明は既存のものより良いものになるかもしれない。ルールが変わってゆくような分野では特にそうだ。ソフトウェアに関する現在の知見は全て、プロセッサは遅く、メモリとディスクが小さい時代に得られたものだ。そういう知恵に、もう時代後れになってしまった前提が埋もれてないなんてことは無いだろう。そういう前提を直すには、明示的にその部分を取り除くのではなく、むしろガベージコレクションに近いことが必要なんだ。無知だけど優秀な人間が全てを再発明して、その過程で既存の余分なアイディアがそぎ落とされるんだ。


学生のためのベンチャー指南---A Student's Guide to Startups

あぁ、すごくよくわかる。まさにって感じだ。まぁ当たり前ではあるが。
泣くぐらい笑える。